読書で子どもの学力は伸びる? その2
前回は、読書が子どもたちの語彙力や文章読解力を育み、国語だけでなく数学や英語、理科、社会など、すべての教科の学習を支える基礎となることについてお伝えしました。
また、小学生から高校生になるにつれて読書量が減少している現状にも触れました。今回は、その続きとして、読書習慣をどのように身に付けるか、そして紙の本で読むことにはどのような意義があるのかについて考えていきます。
4.紙の本で読むことには、どのような意味があるのか
ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。
それは、本を読むときに、紙の本とスマートフォンやタブレットなどの画面で読むことには、どのような違いがあるのかということです。
現在は、電子書籍やインターネット上の記事など、デジタル媒体で文章を読む機会が増えています。
もちろん、電子書籍にも利点があります。多くの本を持ち歩けますし、分からない言葉をすぐに調べることもできます。
では、紙の本で読むことには、どのような意義があるのでしょうか。
① 紙の本は、文章の理解を助ける可能性がある
紙の本と画面上の文章を比較した研究では、紙で読んだ方が文章を理解しやすいという結果が報告されています。
例えば、2019年に公表された研究では、紙と画面で読む場合を比較した33件の研究を分析した結果、全体として紙で読んだ場合に、小さいながらも文章理解の面で優位性が認められました。特に説明文などでは、その傾向が見られました。
一方で、2024年に公表された別のメタ分析では、37件の実験研究を分析した結果、紙とデジタルでの読書の間に、文章理解の全体的な有意差は認められませんでした。読む人の特性や文章の種類、読書環境などによって結果が変わる可能性があります。
このことから、紙の本で読むだけで知能が高くなる、あるいは電子書籍では学力が身に付かない、と断定することはできません。
しかし、じっくり文章を読み、内容を理解するための手段として、紙の本を積極的に活用することには十分な意義があると考えられます。
② 紙の本は、集中して読む時間をつくりやすい
紙の本を読むときは、基本的に目の前の本に意識を向けることになります。
一方、スマートフォンで文章を読んでいると、通知が届いたり、気になる情報が目に入ったりして、読書が中断されることがあります。
もちろん、スマートフォンの通知を切るなど、環境を整えれば画面上でも集中して読むことはできます。
大切なのは、媒体だけで優劣を決めることではありません。
子どもが文章にしっかりと向き合い、途中で気を散らすことなく、内容を理解する時間を確保することです。
そのための方法の一つとして、紙の本を読む時間を家庭で設けてみてはいかがでしょうか。
③ 紙の本は、ページを行き来しながら読み返しやすい
紙の本には、ページをめくる、気になった箇所にしおりを挟む、前のページに戻る、といった読み方が自然にできる利点があります。
難しい説明に出会ったとき、前のページに戻って確認する。重要な箇所を読み返して、筆者の主張を整理する。
こうした行動は、内容を確かめながら読む習慣につながります。
もちろん、電子書籍でも同様のことはできます。
大切なのは、ただ文字を追うのではなく、分からないところに立ち止まり、繰り返し読み、理解を深めることです。
紙の本は、そのような読み方を身に付けるための身近な教材になります。
④ 大切なのは、紙か画面かだけでなく、何をどのように読むか
ここまで紙の本の利点をお伝えしてきましたが、紙の本だけが正しい読書の方法だというわけではありません。
電子書籍であっても、興味のある本を継続して読み、内容について考えることはできます。
反対に、紙の本を手にしていても、内容を理解せずに文字を追っているだけでは、読書の効果を十分に生かせないかもしれません。
大切なのは、子どもが読書に親しみ、文章の内容を理解し、自分なりに考える経験を重ねることです。
そのうえで、説明文や長い文章をじっくり読む時間には、紙の本を取り入れてみることをお勧めします。
5.読書習慣を身に付けるために、家庭でできること
「読書が大切なのは分かるけれど、うちの子は本を読みたがらない」
そう感じている保護者の方もいらっしゃるでしょう。
その場合、最初から難しい本を読ませたり、長時間の読書を求めたりする必要はありません。
大切なのは、子どもが無理なく本に親しめる環境をつくることです。
① 子どもの興味がある本を選ぶ
小説や文学作品だけが読書ではありません。
スポーツが好きならスポーツ選手の伝記、動物が好きなら動物の本、科学に興味があるなら科学の読み物など、子どもが興味を持っている分野から始めてみましょう。
最初から大人が読ませたい本を選ぶのではなく、子ども自身が「読んでみたい」と思える本を大切にしてください。
② まずは1日10分から始める
いきなり「毎日1時間、本を読みなさい」と言われても、読書が苦手な子どもにとっては負担になるかもしれません。
まずは1日10分程度、読書の時間をつくってみてはいかがでしょうか。
寝る前や休日の朝など、生活の中に無理なく取り入れられる時間を決めておくと、習慣にしやすくなります。
最初から冊数を競う必要はありません。短い時間でも、本に親しむ経験を積み重ねることが大切です。
③ 読んだ本について親子で話す
本を読み終えたら、感想文を書かせなければならないと考える必要はありません。
例えば、次のような会話で十分です。
「どんなところが面白かった?」
「一番印象に残ったのはどこ?」
「どうして、この人はこんな行動をしたと思う?」
「自分だったら、どうするかな?」
こうした会話を通して、子どもは読んだ内容を振り返り、自分の考えを言葉にする機会を得られます。
親が正解を求めるのではなく、子どもの感じ方や考え方を尊重することが大切です。
④ 家庭に本がある環境をつくる
読みたいときに、すぐに手に取れるところに本がある。
これは、読書を日常生活に取り入れるための工夫の一つです。
本を購入することだけにこだわる必要はありません。図書館を利用したり、親子で本を選びに出掛けたりすることもできます。
大人自身が本を読んだり、面白かった本について話したりすることも、子どもが読書に興味を持つきっかけになるでしょう。
読書を「勉強のためにやらなければならないこと」にするのではなく、日常生活の中で楽しめるものにしていきたいですね。
6.読書は、子どもの未来への投資
子どもたちの学力を伸ばすためには、学校の授業を理解すること、家庭で復習すること、問題演習を繰り返すことなど、さまざまな取り組みが必要です。
読書だけですべてが解決するわけではありません。
しかし、言葉に触れ、文章を読み、内容を理解し、自分なりに考える経験は、子どもたちの学びを支える大切な基礎になります。
読書によって得られるものは、すぐにテストの点数に表れるとは限りません。
それでも、日々の読書で出会った言葉や知識、考え方が、後になって文章を理解する手助けになったり、自分の考えを表現する際に役立ったりすることがあります。
そして、紙の本でじっくり読む時間は、情報が次々と流れてくる日常から少し離れ、一つの文章に向き合う機会にもなります。
子どもたちには、テストのためだけに本を読むのではなく、自分の興味や関心に応じて、本との出会いを楽しんでほしいと思います。
読書は、国語力の土台を育て、学びの世界を広げる大切な習慣です。
お子様が興味を持てる一冊を、一緒に探すところから始めてみませんか。
ECCベストワン本郷駅前校から
ECCベストワン本郷駅前校では、「分かった」で終わらず、「自分でできる」ようになることを大切にしています。
そのためには、知識を身に付けるだけでなく、問題文を丁寧に読み、内容を正確に理解し、自分の力で答えを導き出す練習が欠かせません。
国語力は、国語だけでなく、数学や英語、理科、社会など、あらゆる教科の学習を支える基礎の一つです。
お子様の読解力や学習方法についてお悩みのことがございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
参考:全国学校図書館協議会 「第70回学校読書調査(2025年)」
